平成22年度活動方針

 全日本同和会は昭和35年結成以来、一貫して同和問題完全解決のため、網領、規約、規則を厳守し、広く国民の理解を得、同和運動を展開してきた。今日、世界金融経済不況の影響を受け、我が国では100年に1度の経済危機の状況下の中、不安定就労の問題、中小零細企業・産業面の問題等、格差が拡大し新たな人権問題が発生しているのが現状である。
 昭和30年代後半・飛躍的な経済成長の進歩を遂げ、その後高度成長化し、世界有数の経済大国となり、我が国社会は過疎化、高齢化、少子化が急速に進み、経済的不況、起業の合理化、人間関係や倫理観の希薄化等、人間疎外の社会状況は一層厳しさを加速して来た。こうした潮流に、全日本同和会は同和問題に対する行政や国民の課題意識の衰退や施策の後退に憂慮の念を抱かざるを得ない。
 今後、同和問題の完全解決を標榜し、差別意識の解消を推進するに当たっては、これまでの同和教育や啓発活動で積み上げてきた成果と反省にたって、すべての人の人権を尊重していくための人権教育、人権啓発を再構築していかなければならない。その場合、われわれは、同和問題を我が国の人権問題における重要な中核として位置づけ、この問題に固有の歴史的経緯を十分認識し、国際的思潮の中で積極的に推進していかなければならない。

 21世紀は「人権の世紀」と言われており、我が国が、国際社会の一員として人権に関する国際的な規約や条約に加盟し、世界各国との連携・協力のもと、あらゆる差別の解消を目指す国際社会にあって、その役割を積極的に果たして行くことは、21世紀における我が国の極めて重大な責務である。
 同和問題は我が国固有の社会問題であり、徳川幕府政治によってつくられた身分階層構造、すなわち、身分制度である。そうした封建的身分社会に根ざした同和問題と現代自由経済社会に根ざした人権問題は、根本的に本質を異にするものである。同和問題の解決は、因習からくる偏見の解消であり、身分差別の解消である。したがって、同和問題に対する教育、啓発は、悪因習の根絶をめざしたものでなければならない。
 同和問題は江戸時代に発しているが、決して古い話ではなく、徳川幕府政治でつくられた制度が、今日なお人々の心の奥深いところまで食入って、同和地区の人々の生命まで奪ってきている。
 昭和40年に出された「同和対策審議会答申」。それに基づいて制定された「同和対策特別措置法」、以後法令の改正、答申、意見などが相次いで出され、地方によって多少の較差はあったが、関係機関、そして多くの人々の努力によって、同和問題の完全解決に向けた努力が推進されてきた。

 物的事業は概ね完了したという同和地区も多く、心理的差別の解消を図るための教育、啓発を推進することが今後の重大な課題であると言われている。地対財特法が平成14年3月末日をもって期限失効となり、「地域改善対策事業に関する特別措置法」が終了し、対策事業は一般施策へと移行した。しかしながら、これによって同和問題が解決したというわけではない。
 平成14年度以降については特別措置法としての同和対策事業は法令上の根拠はなくなるが、いまだ課題は山積している。今後この課題については、通常施策の中で優先的に対応しなければらない。法令上の根拠がないからといって、同和問題を放置しておくということがあってはならないし、そのような姿勢を許してはならない。同和問題は、貧富に関係なく差別されるという点では階級差別でもない。また、宗教や能力の違いによる差別でもない。人種、民族による差別でもない。政治によって人為的につくられた差別である。この同和問題は行政の責務として、国民一人ひとりの課題として、完全解決が求められる。
 顧みると、過去の同和運動の歴史的な推進過程の中で差別糾弾闘争は国民に恐怖感を与え、差別意識は温存させる結果を招来させており、この様な観点から同和運動は「対決と闘争」中心のみでは完全解決を期することはできないという教訓を与え、この教訓から我々は、「対話と協調」により国民の理解と合意を得ている。しかも「子らにはさせまい この思い」をスローガンに、親が子を思う人間愛を基調とし、同和問題完全解決を期するという決意のもとに、我々運動を推進する者は、差別の原点を学ばなければならないし、忘れてはならない。先達の声を声として謙虚に受けとめ、運動のためと偽って利権行為に走り、私腹を肥やすえせ同和行為など、伝統ある全日本同和会として断じて許すことはできない。
 今後、同和問題の完全解決を標榜し差別意識の解消を推進するにあたっては、これまでの同和教育や啓発活動で積み上げてきた成果と反省にたって、すべての人の人権を尊重していくための人権教育、人権啓発を再構築していかなければならない。
 われわれ全日本同和会は、同和問題の早期完全解決と人間固有の尊厳に由来する人権尊重の精神を昂揚し、組織創立の原点に立ち返り、襟を正し、会員一人一人が自己の役割と使命を深く自覚し、幹部は資質を高め、常に人格の練磨に努め、真に国民の理解と信頼を得る運動体として、松尾信悟全国会長の下に組織の結束並び拡充を図り、倫理観にも基づく運動を協力に展開し、初志貫徹を期し、われわれは全国各地において、同和行政、差別の実態、対策事業の進捗状況等克服すべき課題を的確に掌握し、実態に即応した運動を創造し、広く国民の理解と協力を得て、特につぎに掲げる事項の推進充実を図るため、強力な要求運動を展開する。

 具体的には
1.山積する諸問題解決の為、適正なる人権擁護法案の早期制定に、全組織をあげて運動を強力に推進する。
1.人権問題を学習する場合、それぞれがもつ固有の問題と課題に合わせて、同和問題の早期完全解決を内容とする啓発・教育の推進を求める。
1.経済基盤の確立には活発なる就労対策、中小企業、零細経営者等の救済を求む。
1.行政機関の主体性の確立と中立公正な施策の推進を求める。
1.同和問題の根絶を期するため、優れた資質をもった指導者の養成と確保をはかること。

 以上の通り、活動の方針を定め同和問題完全解決を目標に活動を展開する。